海産無脊椎動物の系統保存に関する研究背景


四方を海に囲まれた日本は南北に細長く、寒流域や暖流域にすむさまざまな海産無脊椎動物に恵まれた国の一つである。海産無脊椎動物の系統作成は今後の海産資源利用を考える上でも価値があり、また、沿岸開発や環境汚染等の影響で採集が徐々に困難になっている現状下で、安定した実験材料の提供と言う観点からも重要だと考えられる。そもそも海産無脊椎動物は発生生物学等の良き実験材料として”古くより”研究の対象となりながら、一般的に長期飼育が困難なこと世代時間が長いことなどから系統保存がほとんどなされていなかった。俗に言う系統が存在する種もアコヤガイ、カキなどライフ・サイエンス的というよりは水産的に価値のあるものに限られている。

遺伝子の機能より生命現象を解明することが生命科学の一つの流れとなっている現在、系統をベースとした遺伝子工学的手法の導入は不可欠である。また、 ほとんどの海産無脊椎動物は系統学上、後生動物の低次に位置しており、従来のモデル動物との比較対象として注目を浴びつつある。ゲノム・サイエンスが進展しつつある現状下で、モデル動物になり得る種での系統作成の重要性は今後ますます高まってくるであろう。

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