・水質と餌の量のバランス


 飼育にとって重要なのは、水質の安定と餌の十分な供給である。循環海水の系は水質は安定するが、餌のグラシリスも瀘されてしまい餌の不足を招く。これに対する対策としては、餌を満たした海水をシャーレに入れて別に準備しておき、一日に何回か、食べ過ぎではない程度に個体をつけておくという方法がある(埼玉大・教育・藤沢研)。しかし、それなりに労力がかかるし、いい加減にやるとコンタミの危険率も上がる。静水中で飼う方法は、許容範囲内での水質の悪化には目をつぶり、定期的に換水を行うことによって、また水質を元に戻すと考えることが出来る。そのコストとしては、大量の海水が必要とされる。現在、一番現実的だと思われるのは、餌を大量に含んだ海水(天然海水など)を粗い濾過で循環させるという方法である。結局のところ、飼育にどれだけコストを掛けられるかの問題になってくる。

・海水のDown sizing

 臨海実験所のような海水がふんだんに使えるところを除き、陸上では、海水の確保は、とても重要なファクターである。業者から沖海水の購入も可能だが(e.g. 東海汽船など)、たまに比重や水質が悪い場合が報告されるので、継代していくことが不可欠な系統に対して用いるときは、何らかのチェック機構をもうける必要がある。比重とpHは、調べやすく且つ、重要な事項なので、是非、飼育に用いる前にチェックしたい。
 陸上のラボにおける、海水のコストを下げるには、最低限の海水で飼育を行うことである。しかし、実際には、小規模で飼うよりは、規模が大きい方が成長は良好である。我々は、幼生のうちはシャーレで、着床・変態したらタッパーで、体長が1cm以上になった稚ボヤはプラスチック水槽(2.5L)で、大きくなってきたら密度を減らす、というようにしている。飼育で一番手間がかかるのは糞取りである。それを簡単にするのは、海水を全部取り替えてしまうことである。

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